「子供が笑ったときに下顎が出る2つの原因と予防法、効果的な治療法について小児歯科医が分かりやすく解説していきます。」
お子様が笑ったときに下顎が前に出ているけれど、「コレって受け口?」「しゃくれなのかな?」と気になっていませんか?
下顎が出る「受け口」・「しゃくれ」の症状があると、食べ物を噛みにくかったり、話す時に発音しにくい、などの問題が起こりえます。見た目、顔つきも気になるかもしれません。
そこで今回は、子供が笑ったときに下顎が出る2つの原因と予防法、効果的な治療法について小児歯科医が分かりやすく解説していきますので、ぜひ、参考にしてみてください。
▽先読み!この記事で分かること
・子供の下顎が出る「下顎前突(反対咬合・しゃくれ・受け口)」
・原因は遺伝による骨格的な問題、もしくは歯並びが悪いこと
・歯並び悪化につながる癖を直す
・早めに適切な治療を受けることが大切
このページで分かること
ご質問:子供が笑うと下顎が出て目立ちますが、原因は何ですか?
ご質問をいただきました。
ご質問者様:5歳の娘さんのお母様
5歳の娘が笑ったり、写真を撮る決めポーズの時に下顎を出すような表情をします。
結構目立ちますので、このまま放っておくと、将来しゃくれ顎になってしまうのではないか…と心配です。
下顎が出る原因は子供の癖によるものでしょうか?それとも歯並びが悪いためですか?
原因と対策法を教えていただきたいです。よろしくお願いします。
回答:遺伝による骨格的な問題、もしくは歯並びが悪いことが原因です
質問に回答します。
子供にとって、笑ったときに下顎を一時的に出すことは、実は一種の遊びであることも多いです。
笑った時だけ下顎が出るのであれば、子供の癖によるものなので、親御様が声かけをしたり、成長過程において自然と減っていくでしょう。
お子様によってはストレスを感じたり、寂しい思いをした時に、心理的な反応でしゃくれたような表情になるケースもあります。
この場合は、ストレスの原因となっているものを取り除いてあげることで、笑ったときに下顎を出す表情をしなくなります。
もし、お子様が一時的ではなく、笑ったときにいつも下顎が出ている場合は、遺伝によって骨格的な問題がある、もしくは歯並びが悪い可能性が高いです。
成長と共に下顎が過度に大きく発達した場合(あるいは上顎の発達が遅く、上下の顎バランスが悪い)、その傾向が目立ってきて、大人になった時に「しゃくれ」になりやすいです。
骨格的に問題がなくても、日頃の舌を押し出す癖などが原因で、下の前歯がどんどん前に出てきて、「受け口」の歯並びになった可能性も考えられます。
気になる場合は、一度、歯科医院に相談して、歯科医院に下顎が出る原因を説明してもらい、適切な治療を受けることをおすすめします。
子供の下顎が出る「下顎前突(反対咬合・しゃくれ・受け口)」とは?
口を「いー」という形にしたときに、下の前歯が上の前歯よりも前に出ていている噛み合わせのことを「下顎前突(かがくぜんとつ)」といいます。
正しい噛み合わせは上の前歯が下の前歯にかぶさっている状態ですが、「下顎前突(かがくぜんとつ)」の場合は通常の逆(反対)になっています。
そのため、「反対咬合(はんたいこうごう)」とも呼ばれており、いわゆる「しゃくれ」・「受け口」のことです。
▽子供の「下顎前突」のセルフチェック
以下に一つでも当てはまる場合は、「下顎前突」の可能性があります。
・イーっというと下の前歯が上の前歯より前に出ている
・食べ物を噛みずらい、顎が正しく動いていない
・発音が不明瞭、舌足らず、話しにくそう
お子様が食べ物を上手く噛めない、舌足らず、話しにくい、といった症状がある場合は、下顎が過度に成長する6歳頃までに、歯科医院に相談して、早めに治療を受けることが大切です。
どんな問題が起こるの?
子供に「下顎前突(反対咬合・しゃくれ・受け口)」の症状がある場合、以下の問題が起こる可能性があります。
・顎関節症のリスク、顎が痛くなる
・食べ物をうまく噛めない、うまく飲み込めない
・口を閉じにくい、口呼吸になってしまう
・発音がうまくできない
・口臭になりやすい
・首や肩などの筋肉が痛い、凝る
通常、私たちが食事をする時は、前歯で食べ物を噛み切ったり、奥歯で細かく咀嚼したり、上下の顎を動かしています。
下顎が前に出ている噛み合わせの場合、前歯を上手く使えないので、奥歯ばかりを使うことになり、奥歯と顎関節に負担がかかり、顎関節症のリスクも起こりえます。
上記は機能的な問題ですが、お子様が成長したときに見た目が気になったり、横から見た時の「横顔」にコンプレックスを抱える可能性もあります。
子供が笑うと「下顎前突(反対咬合・しゃくれ・受け口)」になる2つの原因
子供が「下顎前突(反対咬合・しゃくれ・受け口)」になる原因は遺伝による骨格的な問題と歯並びによる問題のどちらかによって起こります。
①遺伝による骨格的な問題
ご両親や親せきに「下顎前突(反対咬合・しゃくれ・受け口)」の症状がある場合、お子様に遺伝的要素が関係して、下顎の位置が前に出たり、下顎の骨が前に突き出ることがあります。
骨格的に下顎の位置や大きさに問題がある場合、「下顎前突症」という症状の可能性があり、歯並びの噛み合わせも全体的に前方向へズレていきます。
下顎の成長は6歳頃にピークを迎えて、男の子の場合は18歳ぐらいまで、女の子は14歳ぐらいまで成長・発育しますので、早期に適切な治療を受けることで根本から改善可能です。
②歯並びによる問題
骨格的には問題がなくても、舌で歯を押し出す癖によって下の前歯が押し出された場合は、歯並びが「しゃくれ」・「受け口」になりやすいです。
また、舌の位置が通常よりも低い「低位舌」になると、口を閉じにくいので自然と口呼吸になってしまい、歯並びがしゃくれる原因になることがあります。
しゃくれ・受け口の原因が歯並びにある場合は、歯科医院で適切な矯正治療を受けることで歯並びと正常な噛み合わせへ改善することができます。
子供のしゃくれ・受け口は自然に治るの?
残念ながら、子供のしゃくれ・受け口をそのまま放っておいても、自然に治る可能性はかなり低く、今から症状を悪化しないための対策法を取り入れたり、治療を受ける必要があります。
下顎が成長すればするほど、しゃくれ・受け口の症状が目立ってきますので、早めに対策することが大事です。
笑うときだけ下顎が出る…放置して良い?セルフチェックと受診の目安
写真や笑顔のときだけ下顎が前に出る場合、成長途中の「表情の癖」や舌の使い方(舌突出癖)などが関係していることもあります。ただし、いつも同じように前に出る/前歯の噛み合わせが逆転するといったサインがあると、受け口(反対咬合)や骨格的な傾向が隠れている可能性があります。
セルフチェック(1分)
- 横から見ると、上下の前歯が逆に噛んでいる(下の前歯が前)ことがある
 - 普段からお口がポカンと開きやすい/鼻呼吸が苦手
 - 飲み込み時や会話中に舌で前歯を押しやすい・前歯の裏に舌が当たりがち
 - 家族(親族)に受け口/しゃくれの人がいる
 
上のうち2つ以上当てはまる/3か月以上変化がない/正面写真で下顎が前にズレるなら、早めの相談をおすすめします。
ご家庭でできる対策(今すぐ)
- 鼻呼吸の習慣化:日中の口閉じを意識。就寝時の体位や鼻づまりのケアも確認
 - 舌の正しい位置(スポット)を練習:舌先を上前歯の少し後ろ(上顎の丸いスポット)へ置く
 - やわらか食に偏らない:よく噛むメニューや姿勢(足底接地・前屈みNG)を意識
 
受診の目安
- 笑顔時だけでなく、普段から下顎が前に出やすい/前歯が逆噛みになってきた
 - 滑舌が気になる(サ行・タ行など)/前歯で食べ物を噛み切りにくい
 - 写真・横顔で下顎の前突が目立ってきた、もしくは家族が気づくほどになってきた
 
詳しい基礎知識は、症状ページの受け口(反対咬合)とは?をご覧ください。お口が開きやすい方はお口ポカンの原因と対策も参考に。受診の流れははじめての方へ|初診の流れでご確認いただけます(電話カウンセリング→検査→計画→開始)。
子供のしゃくれ・受け口を予防する7つの対策法
お子様が将来、しゃくれ・受け口にならないためには、どうやって予防すればよいでしょうか?今からできる対策法をご紹介しましょう。
▽日頃の習慣
①指しゃぶりなどの お口回りの良くない習慣を絶つ
歯並びに影響を与えますので、3歳までにやめるとよいです。
②舌で前歯を押す癖を直す
子供は無意識に行っている場合が多いので、早めに癖を直すことで予防につながります。
③口呼吸から鼻呼吸へ改善する
鼻詰まりによって鼻呼吸が難しくなると、口呼吸になります。口呼吸の習慣は歯並び悪化につながるため、鼻呼吸への改善が大切です。
④正しい舌の位置を覚える
通常、舌は上顎の前歯の裏あたりにピタリとくっついていますが、口呼吸などが原因で上顎が成長不全となると、舌の位置が下がり、受け口になりやすいので、改善が必要です。
⑤食事中はよく噛む
現代の子供たちは柔らかいものを食べる機会が多いですが、硬めの野菜や歯ごたえがあるものをよく噛んで食べるように心がけましょう。
⑥爪を噛む癖をやめる
爪を噛む癖があると、前歯が前に引っ張られて、下顎が過度に発達し、受け口の歯並びになる原因となりますので、早めに癖を直すことが大事です。
⑦頬杖をつく癖をやめる
頬杖をつく癖によって、手で下顎が前に押し上げられて顎が前方に突き出てしまい、受け口になったり、顎が変形したり、顔が歪んでしまうリスクがあるので癖を直しましょう。
子供の下顎前突(反対咬合・しゃくれ・受け口)の治療法
子供の下顎前突(反対咬合・しゃくれ・受け口)の症状は成長と共にさらに骨格が前に出ていきますので、受け口の傾向が強まる可能性があります。
下顎は6歳をピークに成長しますので、なるべく早めに歯科医院で症状を診てもらい、原因についてしっかりと説明を受けて、早めに適切な治療を受けることが大切です。
マウスピース型の矯正装置を使った治療法
透明で目立たず、取り外し可能なマウスピース型の矯正装置を使用して、下顎前突の症状を改善する治療法です。成長過程にある子供の骨は柔らかく、動きやすく、痛みも抑えられます。
当院では、乳歯が生え揃う3歳くらいからマウスピース型の矯正装置を使った治療法を行うことができますので、骨格的な問題を改善していきます。
マウスピース矯正と同時に歯並びに悪影響を与える日常の癖を改善するため、「MFT(口腔筋機能療法)」と呼ばれるトレーニングも行います。
フェイスマスク(上顎前方牽引装置)
上下の顎骨がズレている、骨格的な問題がある場合は、就寝時にフェイスマスク(上顎前方牽引装置)を12時間以上装着し、下顎の成長を抑えます。(上顎の前方成長を誘導します)
装着時に特に痛みはなく、治療期間は半年から1年未満で改善されるケースがほとんどです。できるだけ、早い時期から顎の成長を適切な方向へコントロールをする必要があります。
子供の下顎前突(反対咬合・しゃくれ・受け口)は早期治療が大切
子供はまだ顎骨が成長過程にありますので、早めに治療を受けることで上下顎の成長バランスを適切な方向へ促し、歯並びと噛み合わせを改善することができます。
成人してから矯正する場合には、上顎歯列を前に出して、下顎歯列を後ろに下げるために抜歯が必要となる可能性があり、場合によっては外科的治療を伴うことがあります。
外科的治療となった場合、約10日くらいの入院が必要になり、体への負担も大きくなりますので、子供のうちに早めに適切な治療を受けることが大事だといえます。
よくある質問
笑うと下顎が前に出て見えるのは「受け口(反対咬合)」ですか?
笑った瞬間だけ下顎が前に出るのは、表情筋の使い方や噛み癖による一時的な見え方のこともあります。ただし、受け口(反対咬合)が背景にある場合も多く、放置すると奥歯での咀嚼や発音、顎の成長バランスに影響することがあります。判別が難しいため、気になった段階で専門医にご相談ください。
何歳ごろから相談すべき?
家庭でできる予防・改善はありますか?
口腔筋機能療法(MFT):舌・唇・頬の筋バランスや正しい飲み込み・鼻呼吸を練習します。
お口ポカンや舌の低位の是正:舌の位置と口呼吸の改善は下顎の前方位傾向の予防に役立ちます。
ご家庭での練習だけでは限界もあるため、現状評価と練習内容の選定は専門家と相談のうえで進めましょう。
マウスピース(ムーシールド等)で受け口は治せますか?
年齢・症状により適応が分かれます。就寝時に用いる装置(例:ムーシールドは何歳まで有効?)や、日中の機能トレーニング(MFT)などを組み合わせるケースも。診断に基づき装置の種類・装着時間を決めます。
割り箸を噛むなどの「自宅療法」は効果がありますか?
独自の自己流矯正は歯根や顎関節を痛めるリスクが高く非推奨です。詳しくは割り箸で反対咬合(受け口)は治る?自宅治療のリスクと正しい対策をご覧ください。まずは現状評価と正しい手順から始めましょう。
姿勢や生活習慣も関係しますか?
はい。長時間のうつむき姿勢や頬杖、舌癖などは噛み合わせに影響します。関連情報:子供の姿勢と歯並びの関係。
受け口は自然に治ることもありますか?
成長の中で改善するケースもゼロではありませんが、見極めには専門的評価が不可欠です。放置のデメリットも含め、子供の反対咬合(下顎前突症)は自然に治らない?に解説があります。
どのくらい費用がかかりますか?医療費控除の対象?
費用は症状や装置により異なります。大まかな目安は料金プランをご覧ください。税制面は小児矯正は医療費控除の対象?も参考に。お支払い方法は当院の方針に準じます。
実際の症例を見たいのですが?
当院の症例紹介:反対咬合(受け口)の症例 などをご覧ください。似たケースでも最適解は異なりますので、個別評価が大切です。
受診したいときはどうすればいいですか?
初診の方は来院前に必ず電話カウンセリングを行います。手順ははじめての方へ(初診の流れ)をご確認ください。アクセスも併せてご確認ください。
子供が笑うと下顎が出るお悩みは「ABC Dental」までお気軽にご相談ください
子供のうちに受け口の治療を受けることで、顎の幅を広げたり、顎骨の成長をコントロールしたり、成長を利用した矯正が可能となり、根本的な歯並び改善につながります。
マウスピース治療は取り外し可能ですから、お子様のストレスがほとんどなく、食事や歯磨きも通常通り行えるのがメリットです。
当院では、歯並びが気になるお子様に「初診カウンセリング」でを行っておりますので、症例経験が豊富な小児歯科医に直接ご相談くださいませ。
まとめ
今回は、子供の受け口・しゃくれの原因、予防法、治療法についてご紹介しました。
お子様の歯並びが気になる方は、お子様と一緒に大田区田園調布にある「ABC Dental 子ども専門 小児歯科 矯正歯科」にお越しいただき、小児矯正の初診カウンセリングをご利用くださいませ。
東雪谷、南雪谷、雪谷大塚町、上池台、久が原、南馬込、北馬込、西馬込、東馬込、仲池上、北嶺町、東嶺町、西嶺町、池上、下丸子などのエリアからも通いやすい小児歯科医院です。
楽しく学ぶ4コマ漫画
本ページの内容は、歯科医師が監修したイラストを用いてわかりやすく解説しています。
